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02.22
Sun

自己組織化-自然界の法則に学ぶ未来のエンジニアリング-自己組織化-自然界の法則に学ぶ未来のエンジニアリング-
(2015/02/25)
ジョン・A・ペレスコ 著
鈴木宏明 訳


編集を担当した本の宣伝です. (2015年2月25日発売予定!)
「自己組織化」(self assembly)は,材料が混ざるだけで勝手に構造ができあがる現象のことです.新しいものづくりの原理としても注目されています. 

(※「自己組織化」に対応する英語としては,抽象的な組織化も含む“self-organization”もあります.本書の自己組織化は物理的な「もの」が出来るというニュアンスの強い“self assembly”です.もっとも,著者によれば両者にそれほど明確な区別はないとのことなのですが.)

自然界で構造ができる現象のほとんどは「自己組織化」だと言えるため,トピックとしてはほぼすべての理工系の分野に関係します.本書でも,水面に浮かぶ泡のつくる模様,石けん膜の形成,タンパク質の折りたたみ,ウイルスの構造形成などなど,自然界にみられる自己組織化の例が数多くあげられています.

本書のタイトルである「自己組織化」は,いたるところにあります.広い意味では,人間がつくった「人工物」以外のものはすべて自己組織化でできたということもできます(本書では,もっと絞った定義が与えられていますが).私たち自身も,受精卵という非常にシンプルにみえる小さなものから,自己組織化によって形づくられたといえるでしょう. (訳者まえがきより)


しかし,ひとくちに自己組織化と言っても多様な現象ですので,すべてに共通するエッセンスを捉えるのはなかなか簡単ではないようです.生物学・物理学・化学・工学等々の分野で「自己組織化は大事だ!」と思われてきたものの,共同で研究するということはなく,分野ごとに独立に研究されてきたというのが実情のようです.

各分野における自己組織化についての専門書や科学啓蒙書は多くありますが,「自己組織化」を分野横断的に扱い,体系化を試みて,共通した考え方や理論的枠組みを解説するテキストブックはこれまでにありませんでした. (訳者まえがきより)


本書は,果敢にもそのようなテキストブックを目指した一冊です.幅広い自己組織化現象を敢えて同一のものと捉えて,「あらゆる(ではなくとも多くの)自己組織化現象に共通するエッセンスとはなにか?」に答えようとしています.雪のきれいな結晶構造は,誰かデザイナーがいるわけではないのに,どうしてあのような秩序だった形になるのか? いったい,どこにデザインの源泉が潜んでいるのか? 本書では,自己組織化に共通する要素をいくつか抽出していきます.すぐに思いつくように,粒子の「形」と粒子間の「相互作用」は重要です.それ以外にも,系の境界条件,駆動力,環境など,自己組織化の主要ファクターをあげています.個別の自己組織化現象が,そうしたファクターを通して説明できることを見ていきます.

また,本書の後半部は自己組織化の工学応用について書かれています.

今後,自己組織化が工学の分野にもますます利用されるようになると考えられます.私たちの身の回りの工業製品は,人間の手やロボットによって部品を一つ一つ正確・精密に配置してつくられています.しかし,自己組織化の原理を応用して,部品を容器に入れてシャカシャカと振るだけでひとりでに複雑な形や機能をもったものが組み上がる,といったことが可能だったとしたらどうでしょうか? (訳者まえがきより)


自己組織化する工学系を設計するための研究が,本書ではたくさん紹介されます.私が面白いと思ったのは,初期の自己組織化工学の実験には,意外なほどシンプルなものが多いということでした.たとえば,「お皿に磁石を入れて振ってみる」など,「遊んでいるだけじゃないか(笑?)」というような実験が,れっきとした研究としてなされているのです.けれども,そんな実験が,やがて高度な自己組織化工学に結びついていきます.本書でも,初期のモデル実験と同じ原理を使って,実際にナノワイヤやナノトランジスタの作製に成功した事例が紹介されています.

自己組織化の研究の数理的な側面にも焦点を当てられます.現象を抽象化した数理モデルを使って,目標物が得られるかどうか,あるいはどれだけ「歩留まり良く」それが得られるのかの解析ができること.また,自己組織化工学の原料として「スター級」と言ってもいい地位にある「DNA分子」には1章分が割かれ,DNAを使うとチューリングマシンと同じ計算能力をもつコンピュータが作れるということなども紹介されています.

最初に訳者の鈴木宏明先生から翻訳の話をいただき,原書を読む機会を得たのですが,一読して「面白い!」と思いました.翻訳原稿も発行までに10回ほど通読しましたが,読むたびに新しい発見があるような本でした.もちろん,発展途上の分野ですので,本書で自己組織化のすべてが分かるというわけではありません.が,自己組織化に少しでも興味のある方は読んで損はないのではないかと思います.やや値段が高い(社内交渉力のなさがなく,もう少し安くできなかったのは無念…!)ので「買ってください」とはあまり強く言えないのですが,書店などで見つけた際にはぜひ手にとっていただけると幸いです.
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