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07.14
Mon

記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ)記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 (講談社選書メチエ)
(2014/06/11)
谷口 忠大



私が「記号創発」という言葉を知ったのはほんの数ヶ月前のことだ.まだまだ新しい研究のはずなのに,もう本が出ている!
しかも面白そうだったので読んでみた.

前半部ではいくつかの具体的な研究が紹介される.分節化されていない文章の中から言葉を抜き出す研究や,外部環境のなかにおかれたロボットが音声処理や画像処理を組み合わせて何かを学習するといったような,人間の知能の一面を実現する試みだ.

後半の章では,研究の背後にある思想がかなり本格的に説明されている.まずは「構成論的アプローチ」の説明にページが割かれ,それがどう従来の実験科学的な方法(脳を調べたり,行動主義的な動物実験をしたりといった方法)と異なるかを説明される.その上で「記号創発」とはなにかを解説している.

***
私の所属した大学院にも,この本の著者と同じように汎用的な人工知能(ロボット)を創ろうとしている先生がいた.その先生を含め,このような研究の話を聞くとき,どこか物足りなさを感じてきた.それは,「エンジン」の部分が「平凡すぎるんじゃないか」,もっといえば「訳者不足なんじゃないか」と思われることだった.今回の本にしても,階層的なベイズモデルで中間的な「記号」が生まれるモデルを使っていたけれど,そういうのって「それを使います」と聞いた時点で「確かに上手くいきそう」ということが分かってしまって,実際のシミュレーションとか実験結果は聞くまでもない,というような一面があると思う.そして,「でも知能ってそれだけじゃないよね」という直観がつきまとう.

この本を読み終えた今では,このような「構成論的アプローチ」の真価が少し分かったような気がする.本書で何度も強調されていたことに,学習の途上にある知能は「認知的な閉じ」(cognitive closure?)にあるということがあった.僕らは世界の一部の情報しか受け取っていない,しかも記号(言葉,対象)はそれとして与えられるのではなく,環境のなかに埋め込まれていて,自分で作らなければならない.そのような前提からスタートすると,世界の中でなにか知的に振舞ったり,コミュニケーションを取れるようになったりすることは実は非常に難しい.それがいかに難しいかは,一度「ロボットに実装する」ことを真剣に考えてみないと分からないことなのだ.

さらに言えば,「階層ベイズモデルで知能のある一面を実現できた」というのが事実なら,それがいかに直観にそぐわなくたって,知能のモデルとして一番優位な立場にある説明であることを認めなくてはいけない.少なくとも「ロボットにはそれを実現することは不可能である」ということの反証にはなる.それが構成論的アプローチの威力なのだということ.
そういうことを本書から学べた.

発達途上の研究について――それも,伝統的な科学の方法とは一線を画することからくる「理解されづらさ」もある研究について――自らの言葉でここまで説得力のある解説を書ける著者はすごい.
熱が伝わってくる本だった.


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