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03.20
Thu
先日,指導教官の先生から連絡がきた.

私の修士のときの研究が査読論文として受理されたとのことだった.論文に仕上げるのは先生と後輩にお任せしたので,とても「自分の論文」といえるものではないのだけれど,やっぱり業績ができるというのは嬉しいものだった.(ちなみに,研究の内容は「ある機械学習の方法を使って,顕微鏡の動画データから細胞位置の割り出す方法を考案した」というもの.)

その半面,《…この論文に価値はあるんだろうか?》と思ってしまう.

正直いって大した成果ではない.いくつかの先行手法をお手本にして,それを少しばかり改良した.先行研究に対して良い部分は当然ある(そうじゃなかったら論文にならない)んだけど,劣る面も少なからずある.いろんなことを客観的に判断して,この手法が使いやすいともいえない.

つまり,重箱のスミをつつくような研究.それでも,修論を形にするのは大変だった.このような地味なことの積み重ねが科学研究であるのなら,研究というのはなかなかしんどいものだなあ...
というのが,査読論文を一つだけ世に出すことができた私の感想です.

けれど,世の中には,1人で数百本の論文を世に出しているようなツワモノがいる.
そういう研究の達人からはどんな風景がみえているんだろう.
そこまでいけば,「役に立つ研究をしている」という実感は得られるのだろうか?


***



ヒラノ教授の線形計画法物語ヒラノ教授の線形計画法物語
(2014/03/15)
今野 浩

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「ヒラノ教授シリーズ」の最新刊.

著者の今野先生は,その研究者人生で150編の査読論文を出した研究の達人だ.その多くが,本書のテーマになっている「線形計画法」に関わるものだったという.

線形計画法は,「線や面で囲まれた領域の中から目的関数を最大化する点をもとめる」という問題.それ自体はいたってシンプルな問題にもかかわらず,著者の師事したジョージ・ダンツィクを中心とする数多くの研究者たちが,半世紀以上にわたり線形計画法のアルゴリズムの「改良」に携わってきた.

そんな「改良」に意味があるのか?
「大いにある」ということが,この本を読むと分かる.

・線形計画法(および発展系の最適化問題)の適用範囲が広い.
・問題はどんどん大型化している(実社会では1000万単位の変数をもつ大型問題がでてきたりする)
・「大きな問題を速く解く」ことにおいて,ハードウェアの進化以上にアルゴリズムの改良が貢献してきた

一つ一つの論文の「改良」は微々たるものかも知れないけれど,何十年も掛けて,人類は線形計画問題を解く力を着々と向上させてきた.そして,いまなおその計算効率向上にしのぎを削っている人たちがいる.なんだか感動的だった...

著者自身も,その一翼を担ってきた一人なのだが,著者が1研究者として,どうやって研究テーマを選び,いかにして問題を解いてきたかということもこの本で描かれている.

著者にとって,生涯の業績の基礎になったのが「線形計画法」を若いときにじっくり学んだことだったらしい.

 p.149 これだけ多くの論文を書くことができたのは,旧約・新約両聖書で線形計画法をきちんと勉強したおかげである.

 p.48 本格勉強法で〈わかった感覚〉を手に入れた四科目の知識は,一生の財産になった.一方,パラシュート勉強法で取り組んだ四科目の知識は… 試験が終わったあとたちまちカリフォルニアの空に飛び去った

著者にとっての線形計画法に相当する,「一生ものの知識」が自分にはあるだろうか,と考えてしまった.

***

研究者を目指す人,あるいは(私のように)かつて研究関わった人にも,お勧めの一冊です.
自分が掘れる「鉱脈」を掘り進んだ結果,たくさんの世の中の役に立つ数学を生み出すことのできたヒラノ教授の言葉に勇気づけられます.
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