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Surfaces and Essences: Analogy as the Fuel and Fire of ThinkingSurfaces and Essences: Analogy as the Fuel and Fire of Thinking
(2013/04/23)
Douglas Hofstadter、Emmanuel Sander 他



ダグラス・ホフスタッターと言えば、有名な『ゲーデル・エッシャー・バッハ(GEB)』の著者。
GEBは、人工知能の分野に大きな影響を与えた怪作と言われるが、その後ホフスタッター自身が人工知能の表舞台に登場することは少なかった。
(その辺りの話は、ホフスタッターの人物像を紹介したこちらの記事に書いてあった。)

GEBの発行から35年の間、彼は何を考えてきたのか。

***

今回の本も、広い意味では引き続き「知能とはなにか」という問題を扱っている。
けれど、GEBを読んだ人にはおそらく意外なことに、この本には脳やコンピュータの話がでてこないばかりか、数学すら出てこない。

この本の中心となるテーゼは、「人間の思考はすべてアナロジーでできている」というものだ。
アナロジーといえば、会話や文章に添えられるスパイスのようなものだと思われがちだが、そうではない。
アナロジーこそ思考そのものなのだ。
それも、一日に何回かなどという頻度ではなく、僕らは、全ての瞬間でアナロジーを使っている。
子供が学校で身につける知識も、最先端の科学理論も、すべてアナロジーの賜物だ。
そうしたことが本書を通じて繰り返し例証される。

著者によれば、知性の本質とは
・アナロジーを使って階層構造をもつカテゴリーをつくり、
・新奇な経験に際して、アナロジーの力で既存のカテゴリーに超高速アクセスする
ことなのだという。

しかし、そんな風に本書の主張の枠組みだけを説明してみたところで、この本の価値は10分の1の伝わらない。
本書の魅力は、一つの主張(たとえば、「思い出すことはアナロジーを使うことである」など)に対して、10も20も繰り出される実例にあるからだ。(本当に、よくここまで集めるものだと思う。ホフスタッターにとっては、人生経験すべてが研究対象になっているかのようだ。ダニエル・デネットは彼のことを"practicing phenomenologist"と呼んだらしいが、ぴったりだ。)

ぴたっとはまるアナロジーを、瞬時に引っ張りだしてる能力をもって「知性」の定義とするホフスタッターだが、まさに自身がそのマスター・オブ・ジ・アートなのだ。
くどいまでの言葉遊びも健在。

だから、それらなしにこの本のあらすじだけを語るのは、タコの入っていないタコ焼き、あるいはサンドイッチのパンだけを食べるに等しいのである。(そして、そんな風にホフスタッターをまねしようと思っても、全然うまくいかないのである…)。

本書は、「人工知能研究の方向性を示す学術書」と見ることもできないことはないが、「知の巨人の頭の中を覗く本」と見た方が良さそうだ。アナロジーのコレクションは、どれも「言われてみればそうですよ!」というものばかりなのだが、ここまで集められると圧巻。そしてなぜか読んでいて気持ちいい。

***

なお、本書はフランス人の言語学者との共著で書かれているのだが、実はフランス語版が同時に出されている。フランス語版と英語版で一つの対をなし、完璧な対訳となっているとのことだ。
また、本の中では「翻訳とはなにか」ということが一つの話題になっている。
そのようなことからも、仏・英以外の翻訳を出すことのバーは相当に高いだろう。

ぜひ、だれか、日本語訳にチャレンジを!
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