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11.19
Tue

流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則
(2013/08/22)
エイドリアン・ベジャン




原題は"Design in Nature"。
本屋で平積みになっているのは知りつつ、物理の普通の啓蒙書のように見えていたので手にとっていなかったが、先日、知り合いにすごく面白いと聞いてあわてて読んだ。

本書の主張は、自然界や人工物に共通に見られる構造(ツリー型の形態など)は偶然によってつくられるものではなく、著者がコンストラクタル則とよぶ法則に従って生み出されるのだというものだ。地形や気象といった自然界のパターンだけでなく、動物の身体のつくりや、人工物を含めた広い意味での進化をも、このコンストラクタル則で説明できることを、たくさんの例を示しながら説明している。(ただし、この本ではそれぞれの事例を「説明できた」と書いてあるだけで数式を見せてくれていないために、「なるほどそのとおり」と納得することはできなかったのが残念だった。)

ここまでだと、「自然界に存在するものの形には規則性があって、それは物理法則で説明できる」というよくある話のように聞こえるかもしれない。しかし、本書の主張が過激なのは、この「コンストラクタル法則」が、熱力学の第一、第二法則と並ぶような、物理の第一原理だとしている点だった。この法則は、他の物理法則で予言できないことを説明するために必要な新しい物理法則だというのだ。

本書の冒頭に書かれているエピソードによれば、かつてプリゴジンは、熱力学の第二法則にしたがって自然はエントロピーを増加させる方向に遷移するが、その遷移の仕方はまったくランダムだと言った。それを聞いた著者べジャンは、そんなはずはない、そこにもルールがあるはずだと考え、コンストラクタル法則にたどり着いたのだという。

やや自説を誇大広告し過ぎている感じも受けたが、面白かった。とくに、コンストラクタル的な見方に立つと、生命/非生命や個/群の区別が本質的でなくなり、すべてが(設計者が不在の)「デザイン」だとみなせるという発想は新鮮だった。

一つ気になったのは、「物理の第一原理」は勝手に作っていいのか?ということ。
たしかに、それ以上理由を遡れない第一原理は物理には必要なんだけれど、コンストラクタル則をそこに含めるのは、なんか気持ちが悪く感じられて、コンストラクタル則もやはり力学などの第一原理を粗視化したときに得られる現象論的な法則なのではないか?と思いたくなってしまった。(そうだったとしも、十分価値のあるものだと思う。)ただもちろん、そう考えてしまうのは現行の物理に毒されたせいかもしれない。とはいえ、この「第一原理としてしまおう」というのは「意識」の議論でも出てくる論法なので、「科学の第一原理に相応しい法則の基準はなにか」ということが、この本を読んでいて気になった。

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この本の日本語版の監修者解説がとても読みやすくてよかったです。監修者は、コンストラクタル法則を「熱力学第二法則では満たすことの出来ない、べジャンの自然認識への願望を満たすことを可能にした原理」だと言い表していますが、ちょっと突き放しているところも含めて(笑)、すばらしく的を射た要約だと思いました。


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