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11.07
Thu
11月が始まったらだいぶ寒くなった.
街でクリスマスソングが流れるようになった.
まだまだ秋を楽しみたかったのにな...



Conversations on Consciousness: Interviews with Twenty MindsConversations on Consciousness: Interviews with Twenty Minds
(2005/11/10)
Susan Blackmore



先日,会社の上司と「人工知能」について話す機会があった.
スパコンをつかった全脳シミュレーションの延長上で,人間並みの知能をもつコンピュータをつくることもできるかもね,などという世間話.その上司は,割とコンピュータの進化について楽観的で,「いつか,我々の仕事も人工知能に奪われるかもしれない」といっていた.私は,普通の人よりは多く脳について考えてきたつもりなので,シミュレーションと人工知能は違うことなど,異議申し立てしたいこともあったのだが,その場で議論しても仕方がなく,「そうかもしれないですね」などと話を合わせるしかなかった.

今後は,日常会話のなかでも,人工知能の話が出てくることが多くなるのかもしれない.
「脳をコンピュータ内で精度よく模擬すれば知性が現れる」とか,もっと極端に「自分の意識をコンピュータにアップロードして不死身になれるのではないか」という直観をもつのは構わないのだけれど,ちゃんと考えるとそんなに簡単な問題ではないですよ?といいたくなる.なにせ,(「心身問題」から「心脳問題」へなど)呼び方は変わってはいても,それは人間が3000年くらい考え続けてきた問題なのだ.自分の直観だけを頼りにしたおしゃべりでは物足りないと思ってしまったしても堪忍してほしい.

「知能とはなにか」という問題のうち,もっともハードコアなのは「意識」の問題だと思う.物質である脳内の物理現象はどうやって主観的な意識現象をつくっているのか?私がこの問題に触れたきっかけは,茂木健一郎氏の著作だったが,茂木さん以外にも意識の問題に取り組んでいる日本人研究者は多くいる.それにもまして,英語圏では,the best and the brightestな人たちが,この問題について一家言を持っている感がある.

すごい時代に生きていると思う.
コンピュータや脳科学がものすごい勢いで進化していることによって,「意識とはなにか」というような問題が,専門家だけのものではなくなり,昔は浮世離れした学者たちしか論じていなかった問題について,誰もが興味をもち,議論する世の中になったのだ.

だから思うのは,非専門家のなかでも,哲学者・認知科学者・神経科学者が議論してきたことを,共有できたらいいのになということ.具体的には,「弱い人工知能」「強い人工知能」とか,「哲学的ゾンビ」「クオリア」など,意識と脳の問題に出てくる基本的な語彙をみんなが踏まえていたら,もっと面白い話ができるんじゃないかと思う(そんな話をしたいのは私だけ?そんなことないはず!).

ところが,「意識」の問題を勉強するのは案外難しくて,というのも,これほど専門家の意見にバラエティーがある話題もないから.ある人は,「クオリア」を軸に意識を論じているのに,別の人は「クオリアなんていうものは存在しない」と言ったりする.「クオリア」容認派中でもその解釈は無限に分岐する.だから,ある一人の専門家の本を読めば分かるというものではないことが,この問題の難しいところなのだ.

そんな中,良い本がありました."Conversations on Consciousness"(『「意識」を語る』という題で邦訳も出ています).

自身も意識の問題に取り組んできた心理学のSusan Blackmoreが,20人の哲学者・神経科学者・物理学者たちにインタビューをおこなうというもので,出てくる面々がすごい.「意識」を語るには欠かせないDavid ChalmersやJohn Searle,Dan Denneteはもちろん,今をときめくChristof KochやRamachandran,さらには生前のFrancisco VarelaやFrancis Crickなど錚々たるメンバーが登場する.

本当にみんな千差万別な考え方を持っていた.それは,直観的に近いものから,直観からやや距離のある立場まで.さらに,(これが不思議なのだけど)その直観自体も人によって差があって,例えばある人は「哲学的ゾンビ」という考え方をごく自然に受け入れることが出来る(そのうえで,それを擁護したり,実はイリュージョンだと言ったりする)のに,別の人はその考え方自体が初めから「ナンセンス」だと否定したりする.一つ感じたのは,自分で実験をして非自明な結果を出した人は,ほかの人にはない,キラリと光る説得力を持っているということだった(中でも,明晰夢を研究しているStephen LaBerge.あと,やっぱりラマチャンドランがすごい).

専門家の間ですらこんなにもすれ違っているのだから,自分の日常で意識談義を成立させるのは大変だな..というのが正直な感想.ただ,素晴らしいと思ったのは,自分の立場を説明する言葉をちゃんと持っていて,それをインタビューアーのスーザンブラックモアがうまく引き出しているところだった.

日本でもこんなインタビュー集ができないものだろうか.
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