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10.06
Sun
土曜日は「久保記念シンポジウム」へ.
統計物理の父である久保亮五先生の名を冠する,今年で18回目を迎えるというシンポジウム.最初の沙川貴大先生の話だけ聞いてきた.

沙川先生の話のテーマは,「(量子的)情報を含んだ熱力学第二法則」について(正式タイトルは「量子情報と熱力学第二法則」).
量子の部分は難しくてよく分からなかったのだが,「熱力学第二法則を情報を含んだものに拡張できる」という話には,目からうろこが落ちる部分が多かった.

主なストーリーは以下の通り(個人的に理解できた範囲です).

・熱力学第二法則とは,「温度差のないところから,熱的に仕事を取り出すことができない」ことを定めるもので,またの表現は,0≦ΔS
 (全系のエントロピーは常に増大する)
もしくは,自由エネルギーという量を定めることにより,
 (外に取り出せる仕事)≦(系が失った自由エネルギー)
と表せる.
・ところが,ランダムな動きを「情報」を使って整流できるとすると,第二法則が破れたような状況が出来る(これを行うのが,有名なMaxwell's demonだ).もちろん,よく知られたように,情報を処理をするメモリー(コンピュータチップ,あるいはデーモンの頭の中の細胞)を合わせた全系を考えれば,エントロピーは減っていない.
・このような系は,「情報によるフィードバックのある系」とみなすことができ,「系とフィードバックする記憶装置を合わせた全系」に対しては,次の「一般化された熱力学第二法則」が成り立つ.
 (外に取り出せる仕事)≦(系が失った自由エネルギー)+(系が得た情報量)
エントロピーで表せば,
 0≦ΔS(系)+ΔS(記憶装置)
である.

実際の講演では,このあとに,量子系でも同じような考察が可能であるという話が続く(そちらがむしろ本論である)のだが,ここまでの話でも十分に面白かった.

「仕事(エネルギー)」と「情報」の交換可能であるということは,常識の一部だ.
・情報をうまく使うことによって,実際にモノを動かしたりすることができる(例:帆船は,風がどちらからから吹いてくるかの知識を使って,行きたい方向に進める).
・反対に,情報処理には,エネルギーの注入が必要になる(例:糖分を補給しないと思考が鈍る).

しかし沙川先生の講演を聞いて分かったのは,この「仕事⇔情報」の変換が,厳密に定量化出来るようになりつつあるということだった.つまり,
・ある情報をもとに生み出せる仕事の,上限値はいくらか?
・ある情報処理を行うために,必要な最低のエネルギーはいくらか?
などの問題に,理論的な答えが出ているのだ.しかも,それは机上の空論にとどまることなく,ナノスケール技術の進化によって実際にその理論値を実現するような実験も,どんどん出てきているらしい.

仕事と情報が厳密な数式でつながっている,などという話を聞くと,いろんなインスピレーションが沸いてしまう.

たとえば,私の仕事(力学的な仕事ではなく日常語の意味での仕事)は,普段まったく身体を動かさない典型的なホワイトカラー職なのだが,もしかしたら,「情報」を通じて社会に物理的なエネルギーを与えているのかもしれない,とか.逆に,情報は物質界のエネルギー注入で成り立っているということは,情報があれば何でもできる考えがちな現代都会人メンタリティーへの戒めにもなるのでは,とか.

妄想は膨らむ.
ますます高度に情報化する社会では,人間は賢くなり,エネルギーを生み出す(節約する)ことができるだろう.一方,ビッグデータを維持するために投入すべきエネルギーも膨大なものになる.エネルギーと情報の等価変換のバランスは,果たしてどの辺に置くべきなのだろうか.
実は「拡張された第二法則」こそが,人類の行く末を占う基本的な方程式である!?
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