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04.26
Sat
最近読んだ本。


統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)
(2010/04/01)
デイヴィッド・サルツブルグ



統計学の歴史をテーマにしたポピュラーサイエンス。各章で、20世紀に活躍した統計学者の一人一人にスポットが当てられる。
統計学にはいろいろな「主義」や「派閥」があるのは知っていたが、歴史的にも、決して単線的にできあがった学問ではないことが分かった。(父ピアソンがいて、フィシャーが出てきて、息子ピアソンとネイマンがフィッシャーに楯突いて、その後にベイズがリバイバルして、という…)

統計学者たちのキャラクターを紹介していくのが主なので、「これを読んだら統計の考え方が分かる」という本ではなかった。むしろ僕にとっては、自分の不勉強を知るための本となった。例えば、フィッシャーの検定とネイマン=ピアソンの検定の違いが分かってなかったことに気づいた。こういうことは普通の統計学の教科書にはあまり書いていない。「統計学の理解」にもいろんなレベルがあるだろうけど、本当に理解するには歴史をしっかり辿ることが必要かもしれない。

本書のところどころで、「確率の解釈はまだオープンクエスチョンとして残されている」というようなことが書かれていたのが気になった。そのあたり、もう少し詳しく書いてほしかった。


哲学入門 (ちくま新書)哲学入門 (ちくま新書)
(2014/03/05)
戸田山 和久



何かと話題になっている(僕のtwitterだけ?)、科学哲学者の戸田山先生による『哲学入門』。
まず、新書でこの厚さであることと、タイトルが目を引く。自然主義という、哲学の中では主流とはいえないらしい立場(ということを、哲学出身の知り合いに教えてもらった)立場から書かれた本なのに、あえて「哲学入門」。そこにはおそらく明確な意図が込めらていて、それは「自分の頭で考えて世界を統一的に理解しようという試みが哲学なのであって、プラトンやカントやニーチェをちょろっと紹介していくのは哲学ではありません。いまから私の哲学を展開してみせます。こういうのが哲学なんですよ。いいですか?」という著者の意気込みなのだ。

この本で著者は、科学的な世界観の中にいかに「心」や「目的」や「自由」が存在できるかを論じている。この問題意識は、理系の人であれば少なからず共有しているものだと思う(「自分が勉強/研究している自然法則は、自分の日常生活や人生とどうかかわっているのだろう?」)が、ほとんどの理系人は二元論的態度をとることになる(「研究は研究、生活は生活」)。しかし、戸田山先生は妥協をせず、そこを突き詰めることを自信の哲学のゴールにしている。本書では、現代の哲学者たちの理論を紹介しながら、「心」や「自由」など「ありそでなさそ」なものたちについて、その捉え方を少しだけ変えることで、科学的世界観の中に「描き込む」ことができることを示している。個々の理論展開は理解できたとは言えないけれど、やりたいことはすごく良く分かるし、人工知能や脳科学の分野にとっても、このような自然主義哲学は今後役に立つのではないかと思った。

(最近、科学哲学者の伊勢田先生がブログにコメントを書いていたのだが、それがこの本のありとあらゆる箇所を批判した内容であったので戦慄した。そういう風に批判的コメントをするのが哲学者としての礼儀なのか、あるいは本当に戸田山先生のプログラムの価値を認めていないのか、その辺りは素人たる自分は判断できなかったが、とにかく凄まじいものを感じた。)


数学を哲学する数学を哲学する
(2012/01/16)
スチュワート シャピロ



哲学の一分野としての「数学の哲学」を、教科書的に紹介した本。とある勉強会のために3度ほど読んだ(が、まだまだ未消化)。


女のいない男たち女のいない男たち
(2014/04/18)
村上 春樹



村上春樹の最新短編集。(三省堂神保町店には、例の「本のタワー」ができていた。)
とてもよかった。夏目漱石の「それから」を連想するシーンがあった。
なんというか、村上春樹みたいな作家が、(僕らにはなかなか口にできない)弱さとか傷つきやすさを書いてくれるのって、ありがたいことだなと思った。


Consciousness and the Brain: Deciphering How the Brain Codes Our ThoughtsConsciousness and the Brain: Deciphering How the Brain Codes Our Thoughts
(2014/01/30)
Stanislas Dehaene



『数覚とは何か』の著者による最新の「意識本」。意識の科学の最先端を知ることができる良書で、類書に比べても分かりやすかった。
本書では、「無意識でできること/意識が介在しないとできないこと」を明確に区別した上で、意識をもたらす神経活動("signature of consciousness"と著者は呼ぶ)がいくつか知られていることを紹介する(ここで、今の意識研究が単なる相関"correlation"を超えていることを著者は強調する)。さらに、そのsignatureを植物状態の患者の意識判定に用いた臨床応用の話も紹介される。「意識研究はここまできたか」と思わせてくれる一冊。
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04.09
Wed

Publishing and the Advancement of Science: From Selfish Genes to Galileo's FingerPublishing and the Advancement of Science: From Selfish Genes to Galileo's Finger
(2014/03/31)
Michael Rodgers



オックスフォード大学出版局などで,いくつもベストセラーを手がけてきた編集者による回顧録.彼が,これまでどんな著者に出会って,何を考えて本を作ってきたかを綴っている.

(以前,著者Rodgersさんの講演の感想は書いた:http://rmaruy.blog.fc2.com/blog-entry-32.html)

著者を口説くときの苦労話やら,出版社ごとの風土の違いやら,この本に書かれていることの多くは,もしかしたら多くの人にとってどうでもいい話かもしれない(だから値段もこんなに高い?).しかし,私からすると一流の編集者の考え方や米英の出版の実情を知ることのできるものすごく有難い本だった.

これまで,海外の出版社との実力の差を漠然と感じてきた.向こうの新刊カタログを見ると,量と質で圧倒的に凌駕されている.編集者の仕事の内容やレベルもまったく違うんだろうな,という気がしていた.けれどもこの本を読んで,やっていることはそんなに変わらないんだということ,そして「向こうの出版文化」も,それがずっと続いてきたものではなく,この本の著者のような人たちが試行錯誤でつくってきたものがわかった.たとえば,「ポピュラーサイエンス本がよく売れる」という状況は,ホーキング『ホーキング、宇宙を語る』を皮切りに始まった現象だとのことで,まだ数十年の歴史しかない.教科書にしても,「イギリスの教科書はアメリカでは売れない」というジンクスがあったらしく,アトキンスの教科書でその常識を覆したことなどが(自慢話気味に?)書かれている.「向こうはマーケットの大きさも書き手のレベルも全然違う別世界」という印象が,大分薄まった.

とはいえ,やはりスケール感とスピード感には差がありそうだ.印象的だったのは,著者が何回も転職しているということだった.著者のような凄腕の編集者でも,会社の方針で科学系の本の扱いが少なくなったりすると,転職を余儀なくされている.科学書出版のビジネスとしての成り立ちにくさを物語っていると思う.

***

自分の知的好奇心と商売人的食指を適度にブレンドして,「良い」本でありかつ「売れる」本を世に出していく.編集者の仕事って,やっぱりどこかギャンブル的な要素があって,あまり堅気な職業とはいえないかもしれない.でも面白い,と改めて思った.


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