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04.18
Thu

Number: The Language of ScienceNumber: The Language of Science
(2007/01/30)
Tobias Dantzig、Joseph Mazur 他



数学者Tobias Dantzigによる,数の歴史についての一般向けの本.初版が出たのが1930年代とかなり昔だが,古さを感じさせず面白く読めた.表紙に掲載されている「私が手にした数学の歴史についての本のなかで,これほど興味深いものはない」との推薦文は,なんとアインシュタインの言葉だ.

「数」がその誕生から今まで進化を遂げてきた流れを概観する.人間が数を使い始め,やがて「ゼロ」を発明し,「負の数」が登場する.「無限」(あるいは無限小)の考え方が持ち込むことで「実数」に拡張される.さらに,空想上の数としかみなされていなかった虚数(複素数)が,数として認められるようになる.

この本は,しかし,そうした歴史を描いているだけではない.裏にある主題は「数学とはなにか」である.数の概念の拡張を通して,数学を正体を明らかにしようとする.

最後の章では,「数」の実在性について論じている.自然数から整数,有理数,実数,複素数へと拡張されてきた数の概念は,どこまでが世界に現実に存在し,どこからが人間の作り出した創作物(フィクション)なのか?

結論は,自然数も複素数も,同じくらいフィクションであり,同じくらい実在でありうるというものだ.
著者は端的にいう.
"Fiction is a form in search of an interpretation."
(「フィクションとは,よい解釈がまだ見つかっていない形式のことである.」)

はじめは創作物であると思われるような概念も,人々がそれに慣れ,正しい解釈を与えることで,「実在」(reality)に格上げされる.その例として著者が挙げているものの一つは,複素数と複素数平面の関係である.「x^2=-1の解」という約束事によって虚数を習うとき,誰でも始めは腑に落ちないものだが,複素数平面を導入したとたんに受け入れやすくなる.歴史的にも,複素数が数として受け入れられたのは,ガウスによる複素数平面の発明を契機となったらしい.複素数に2次元デカルト座標系内の点という「解釈」を与えることで,複素数は一気に実在感を得る.

一方,複素数と対照的なのが「実数」である.実数は,"real number"という名称に反して,実は多分にフィクションの要素を含む.というのも,実数を定めるためには「無限大」や「無限小」の概念が不可欠となる.しかし,現実の世界は,実は無限に分割することもできなければ(物質やエネルギーには最小単位がある),無限の広がりを持つわけでもない(宇宙は有限の大きさをもつ)という点で,それらは実世界に様相とはかけ離れているのだ..けれども,あたかも無限小や無限大があるかのように考えることによって,人間は「実数」という道具を手にし,しかもそれをごく自然に受け入れている.

「実数」を可能にした無限の概念のリアリティを支えるのは何なのだろうか?
著者が導く結論はクールである.

p.77 "And yet, the concept of infinity, though not imposed upon us either by logic or by experience, is a mathematical necessity."
(「無限の概念は,論理的な必然性も持たず,また経験によって導かれるものでもない.にも関わらず,それは数学的な必然なのである.」)

論理的な真実と経験的な真実の他に,「数学的な真実」があるというのだ!数が実在と結びつけられるのではなくて,数の概念が実在そのものをつくる.なぜそういえるのかというと,僕らが実在を語るときに,数を使わないで語ることが不可能だからだ.その意味で数は空間や時間と似ている.ところが時間や空間と違うのは,数は発明とその「解釈」によって進化を遂げてきたということ.その進化に合わせて,人間の側の「現実」も進化してきたのだ.

**********************************

「数の概念が拡張されると人間にとっての現実も変わるだなんて,本当かよ」と最初は思ったが,あながち外れていないかもしれないと思う.全ての数が整数の比で表せると信じていたギリシャ人たちの頭の中と,無理数や負の数を使いこなす現代人の頭の中はそれなりに違うだろう.また,微分を使ったニュートン力学の誕生でもだいぶ変わっただろうし,相対論や量子力学によるパラダイムシフトを可能にしたのも,ある意味では新しい「数(数学)」(複素数や行列,非ユークリッド幾何学)と言える.

そう考えると,いまだ僕らの知らない数学は,さらにどう現実を変える力を持つのか知りたくなる.

「数学は現実をつくり変える力をもっている」
しかし,どこから数学はやってくるのか?
それは誰にも分からない,ただ湧き出てくるのだ.とだけ,著者Dantzigはいう.
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04.18
Thu

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)一億総ツッコミ時代 (星海社新書)
(2012/09/26)
槙田 雄司



面白かった.
現代は,ネット上で誰もが評論家になれる時代.
人々は自分がどれだけメタな視点を持てているか(≒ツッコミ力)を争うようになった.

最近のテレビや,ネットを見ていて感じる「(自分を含め)なんか,みんなおかしいんじゃない?」という違和感を言い当てている.朝井亮の『何者』にも通じる視点だと思った.
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